蜘蛛の糸

久しぶりのランチお誘いのメール

唯一 外界と密に接触できる機会

出会いはベビースイミング

お互いの子供の名前から始まった自己紹介

それから付かず離れず四半世紀

彼女の友達とは胸張って言えるのかどうかとツッコミ小人が囁くので

仲の良いご近所さん感覚でお付き合いさせてもらっている

彼女の子供 彼女の甥や姪 娘と年が近いこともあり

いろいろな成長過程を見続けている

興味本位とも取られるが 一人っ子からの一人っ子なので

たくさんの人と接する機会が少ない私にとっては貴重な体験の機会なのだ

彼女の話の中で想像し 脳内擬似体験ができてしまう

私は彼女の話を結構記憶している

しかし 彼女は結構忘れている

それがとても心地良い

会社員の夫に対して彼女は夫婦で自営業

嫁姑の不仲は似ているが 親の生活水準の違い 子供の人生における躓き具合

同じ方向ばかり向いていたら分からなかったこと

同じ経験をしていないのだから 悩みの度合いも怒りの基準もすべて違う

毎回毎回 なるほど そうなんだ そういう考え方もあるよな。。。があって

引きこもりの私にとってはありがたい

彼女は長女で その気質で私にも接してくれる

初めて感動したのは ランチの時私の分までオーダーしてくれた事

いつもなら家族の分は私がまとめてだったので 何だかとても嬉しかった

旅行に行けば必ず娘と私にお土産を買ってきてくれるし

手芸上手で最近では手作りマスクを四枚もプレゼントしてくれた

贈り物でも自分の趣味にあわなければ 容赦なく廃棄処分にするのだか

彼女の物は長く使っている

このままダンナさんとの会話ばかりの生活が続くとヤバイなと思い始めた頃に

ランチのお誘いメールが来る

そう 私の目の前に外界に通じる蜘蛛の糸がすーっと降りてきて

いそいそと身支度してのぼっていく

あぁ 私はまだ大丈夫 外界とつながっていると再確認する

楽しい外界時間は過ぎて帰宅すると

舞踏会から帰ってきたシンデレラならまだしも

久しぶりの化粧が取れたおばさんは力尽きて長椅子になだれ込む

最近はダンナさんも分かってきて 彼女とランチするとメールしておけば

夕食はどうすると退社時にメールが来るようになった